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県南広域的水道整備事業に関する県との協議に参加(環境問題を考える会)

公開日:2024年02月07日 最終更新日:2024年02月09日
登録元:「環境問題を考える会

 県南2市1町(栃木市、下野市、壬生町)では地下水100%の水道水が安定供給されていますが、栃木県は県南広域的水道整備事業として南摩ダムの表流水をこれら2市1町に売り込む計画を進めています。これに対し多くの市民は安くて美味しくて安全な地下水の水道水を維持するよう望んでおり、市政懇談会でも市議会でも質疑が繰り返されてきました。そこで、1月9日(火)当会も参加する「栃木県南地域の地下水をいかす市民ネットワーク」と栃木市・下野市・壬生町の市民団体および各市町議会議員有志が栃木県庁を訪問し、県が進める県南広域的水道整備事業の目的と進捗について、県側関係者との協議(3回目)を行いました。以下、概要を報告します。

日時 2024年1月9日(火) 15時〜16時
会場 栃木県庁北別館 401会議室
県側出席者(計7名)
・総合政策課:竹井政策調整監、穐野主査 ・生活衛生課:高橋主幹、松本副主幹
・砂防水資源課:福田・植木課長補佐、酒巻主査
市民側出席者(計25名) 
・県南地域の地下水をいかす市民ネット:大木代表、服部事務局、他(計4名)
・下野市の水道水を考える市民ネット(当会も参加):中里代表、他(計4名)
・下野市議会議員:村尾議員、加藤議員、他(計4名)
・栃木市の市民および市議会議員(計6名) ・壬生町の町民および町議会議員(計7名)

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協議に先立ち市民側を代表して挨拶する大木代表(県南地域の地下水をいかす市民ネット)

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事前提出の質問事項に対して口頭で回答する県側出席者の皆さん

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県側の回答に対して質問する中里代表(下野市の水道水を考える市民ネット)

内容の概略
 事前に提出した質問事項と県側の回答要点は以下の通りです。(県は口頭での回答のみ、文書なし。質問事項の詳細については末尾に添付した資料を参照。)

1.表流水を導入する必要性、相当性について
質問1)2市1町が思川開発事業の県水を導入しなければならない理由を改めて伺う。
回答1)地盤沈下や地下水汚染、渇水の危惧に対し2市1町には代替水源がないことから、将来にわたり水道水の安定供給を確保するため地下水と表流水のバランスを確保するとの基本方針に基づき、これまで通り2市1町の意向を確認しながら進めて行く。(竹井政策調整監、これまでと同じ回答)
質問2)2市1町が新たに表流水を導入することは経済的にも無理があるのではないか。
回答2)水道基盤強化の必要性も踏まえ、様々な意見を伺いながら進める。(同上)

2.南摩ダムの貯水池運用について
質問)国交省による南摩ダム貯水池運用計算では頻繁に底をつく結果を示しているが、2市1町の給水量を安定して賄えるのか。
回答)国交省と水資源機構に確認したところ、利根川水系のダム群からも協力を得て、貯水量がゼロになる状況が頻繁に生じないように配慮した運用を行うとの説明だった。国交省の運用計算結果そのものは見ていない。(福田課長補佐)

3.県南広域的水道整備協議会、同事業検討部会の予定などについて
質問1)水道行政の国交省移管により、県南広域的水道整備事業に影響することはあるか。
回答1)認可業務が移管されるのみで、特に影響することはない。(高橋主幹)
質問2)検討部会や協議会の開催予定はあるか。今後どの段階で開催するのか。
回答2)2市1町に依頼した用水条件の検討結果を待っているので、それが示された段階で開催を想定している。協議会については協議が整う段階で開催することになる。(同上)
質問3)現時点では用水条件の検討依頼の段階ということか。
回答3)令和3年12月に依頼した2市1町の検討結果を待っている段階である。(同上)
質問4)2市1町への用水単価は物価高騰を踏まえていくらと計算しているか。
回答4)用水条件の検討結果に基づき単価を算出するので、現時点では計算していない。用給水単価は様々な要因から算出するものであり、物価高の影響のみで算出するわけではない。(同上)
質問5)協議会や検討部会は開催の2週間前には情報を公開し、傍聴を認めていただきたい。
回答5)協議会については出席者の率直な意見交換ができるよう、協議会規約に基づき非公開としている。検討部会についても決定段階ではないので、担当者が率直な意見交換を行なえるよう、傍聴は受け入れない。(同上、これまでと同じ回答)
質問6)関係市町住民の意見・要望を反映するために、今後どのように進めるのか。
回答6)県は協議を行う中で、各市町からの意見もいただいていると認識している。(同上)

(上記の後、質疑の時間で市民側から多くの疑問や再質問が出されたが、県側の回答は同じ内容または曖昧な説明が繰り返されたので省略する。)

(総括所見)
1)質問は事前に文書で提出しているのに、県は今回も回答を文書で準備しなかった。回答は口頭で原稿を読み上げるのみ、内容も従来の説明を見直すことなく繰り返すだけで、質問への回答になっていなかった。(過去の協議では、地盤沈下を問題にしてないこと、渇水のリスクは地下水より表流水の方が大きいことを県は認めている。)
2)今後の日程計画も示されず、成り行き任せでスケジュールを管理してないことも従来と同じ。南摩ダムの貯水池運用計算については、そのデータを自ら確認もせず、国交省に聞いた内容をそのまま伝言するだけだった。県の説明にある利根川水系のダム群は思川水系とは違うので、それを用水に利用することは現実的に不可能。それについて市民側から再質問が繰り返されたが、県側は同じ説明や曖昧な弁解に終始するのみだった。
3)県との協議は今回で3回目になるが、その度に入れ替わる担当者がこれまでの協議結果を理解し引き継いで協議に臨んでいるとは思えない。市民のライフラインである水道水について、このような姿勢で県が2市1町の水道事業に介入してくることには疑問を感じざるを得ない。
4)老朽化した配水場や配水管の更新が避けられない中で、多額の費用をかけてダムの水を新たに導入することは経済的にも合理性がないのは明らかだと思う。
5)安くて美味しくて安全な深層地下水100%の水道水が十分にあるのに、高くて不味くて災害にも弱い表流水を遠方から河川を跨いで導入する計画は、市民の感覚としても納得し難い。

(補足)
 この度の能登半島震災では各地で水道水の断水が発生しており、特に七尾市は大幅な復旧遅れが問題になっている。その理由は、遠方の手取川から取水・浄化した表流水(県水)に依存しているためである(他地区は地域の地下水や河川水による自己水源で賄っている)。県南広域的水道整備事業は七尾市のケースと同じリスクを抱えることになるのではないかと危惧される。

県との協議事項(2023.11.27)1

県との協議事項(2023.11.27)2

 

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